ありがとう

悲しいことがあるのを当たり前になんて思えない。それが人生だ、なんて思いたくない。悲しいことは、いつかきっと誰の身にも起こるだろう。でもそれは最小限でいいし、起きないでほしいといつでも願っていたい。悲しみに慣れたくなんてない。
わたしにはわたしの生きるよろこびがある。そして今同じ瞬間を生きてる全ての人たちにも、それぞれのよろこびがある。そのことを片時だって忘れたくない。
苦しくて涙がとまらない夜。だけど朝が来て、やるべきことがあるから、着替えて外に出て行く。色んな人に会い、笑顔を交わし、冗談を言ったり一緒にごはんを食べたりする。仕事をこなす。どうにか終えて、なんとか出来た自分にほっとした。あいさつをしてそれぞれの家に帰る。買い物に行く。レジで袋を買い忘れたらパートのおばさんがタダでくれた。みんなでごはんを囲み、テレビを見る。お酒を飲みながら昔の話で盛り上がったりする。ケンカもたまにするけれど、それも一緒に住んでいればこそ。ひとつのサイクルを終えて、生きててよかったとじわりと思う。そう思っただけでなんだか泣きそうになる。
世界は終わったとうなだれる人もいるでしょう。だけど、よくよく目を凝らしてみてほしい。絶対に、いっこは見つかるはずなんだ。小さな希望が確かにどこかにあるんだ。
大きなよろこびを感じたときに、今この同じ時を生きることが叶わなかった人たちの無念がちょっとでも晴らせたのではないか、なんて、大それた勘違いをしてしまう。だけどほんの少しでも届いていたらな。ほんの少しでいいから、通じていてほしい。今生きていることが、とてつもなく素晴らしいことだということ。その素晴らしさにこんなにも胸うたれていること。涙がまた出た。ありがとう、ほんとにありがとう。どうか安らかに。あなたたちとは会ったことはなかったけれど、いつか、向こうで会えたらなと思います。